ロシアでの5日間(その4)

19日、ボリショイ劇場での本番前のゲネプロが始まった

 

話せば長くなるので内容は省略するが、このゲネプロで様々な事情により研修所の作品は急遽オーケストラ演奏ではなくCDの音源を使用しての上演に代わることとなった

 

正直この条件を持ち出されたときは・・え!この期に及んで?・・と私達日本勢は戸惑いを隠せなかった

 

オーケストラ演奏ではなくなると作品の情感や豪華さにも影響を及ぼすことは必須なので非常に残念なことに思えたからだ

 

しかし逆に考えれば利点もあった

生徒達にとっては演奏のテンポは良く踊れるか否かの重要なポイントになるからだ

 

オーケストラ演奏では、全般を通して今までCDで練習してきたテンポが随所に於いて異なることを覚悟して踊らねばならないが、CDでの上演となったお陰でそういった不安は取り除かれることとなったのだ

 

ボリショイ劇場の床の傾斜に恐れを抱いていたのに実際に来てみれば床を上げてくれて傾斜は殆ど感じな程度になり、演奏のテンポの心配も無くなった訳で実は此処だけの話だが

私としては内心・・ラッキー・・と思ってほっとしていた

 

そんなこんなではあったが結局、研修生達は本番もいつも通りに踊るが出来て結果は大成功であった

 

日本の作品が終わったとたん、大きな拍手がおこり私の隣に座っていた韓国国立バレエのディレクター(女性)がすかさず 「グラジェーション!」

その隣のドイツはストゥッドドガルトのディレクターも「グラジェーション!」と握手してくれた

 

半分は社交辞令と思ってもやはり嬉しかった

 

理想を掲げれば、研修生達の踊りはまだまだ未完成に等しい

だが与えられた身体の条件、現在の彼等を取り巻く状況と大きなストレスのなかに於いては「あっぱれ!」と言っても過言ではなかった

 

 これでまずは半分の私の肩の荷が下りた

明日はクレムリン宮殿での第2弾が控えているが、今日の出来映えならきっと上手くいくに違いない

 

楽屋を出たら誰かが後ろで「おつかれさま!そうそうサッカー、日本がコロンビアに勝ったんだって」と言うと日本の皆が喜びにどよめき、すかさず他の誰かが「ねーねー、ロシアも勝ったからきっと街中はお祭り騒ぎだよ」「え~!:^*;」

 

案の条、車は渋滞、「ロシア!ロシア!・・・・・・」と叫びまくる団体、浮かれてウロウロ、と道路も歩道もまともに歩けない程の大賑わい

 

この日はバレエもサッカーも日本もロシアも幸せな一日となったようだ

そして勿論、私も・・・だ