5年前の夜10時半頃のことでした。
私がスタジオでのリハーサルを終えて自宅に戻ると主人が
「さっき牧先生から電話があったよ」
・・・何かしら?・・・私はすぐに牧先生宅に電話をしました。
受話器の向こうから牧先生は
「小倉さん、今度、研修所の修了発表会で<しらゆき姫>を制作しようと思うのだけれど、振付けしてみない?・・・あっそうそうこのバレエはシアトリカル・バレエといって台詞も入るの。そういうのが嫌いじゃなかったらだけど」
思ってもみなかったお話しに途惑いながらも、私を指名して下さったことへの喜びは大きく、即座にお引き受けさせていただくことにしたのです。
監修である牧先生をはじめとする新国立劇場の制作担当・演出・衣装 装置・音楽構成・照明・小道具の各スタッフの方々とのミーティングが何回か行われる中、私の振付も進んでいきました。
台詞が入るということに関しては、踊りながら台詞を言うことは不可能なので、その時点で<立ち止まり>しかも<客席に向かって>、更には<ステージ前方にて>という条件になります。
踊りを振付ける側の私にとっては踊り手のステージ上での動きの流れ、身体の角度と位置付けも重要なことなのでかなり気をつかうことになりました。
演出担当の先生と話し合い、折り合いをつけながら「しらゆき姫」は徐々に形創られて仕上がっていきました。
スタジオでの<通し稽古>と<舞台リハーサル>において、監修である牧先生のアドヴァイスをいただき、新作「しらゆき姫」はいよいよ本番を迎えるに至ったのです。
研修所終了公演での「しらゆき姫」は紆余曲折しながらも作品としての成功をおさめることが出来、その後新国立劇場<こどものためのバレエ劇場>と銘打ち中劇場にて上演されることが正式決定されました。
初日には皇室から雅子様と愛子様にご来場いただいき、終演後には主要なダンサー達とのご歓談も催されました。
私にとってはこの上ない経験となり記念すべき作品となったのです。
本年7月に今度はオペラパレスにての再演が決定され、懐かしさと同時に再演の日の目を見ることになった「しらゆき姫」に愛おしささえ感じている私です。
コメントをお書きください